岡部さん


岡部さん、辛かっただろうなぁ。でも、金澤さん通して、毅然たる対応だったと思います。4月に障害者差別解消法案が成立してもマインドがないと何も変わらない。何が合理的配慮なのか…察することと特別扱いの差がわかる普通のセンスなんですけど。旧来の封建的な社会を変えていくために役に立ちたいなぁ。

平成28年5月10日
衆議院厚生労働委員会にておこなわれた「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出)」に関する参考人意見陳述の原稿全文です。

おはようございます。
日本ALS協会常務理事の金澤公明と申します。本日このような意見陳述の機会をいただき感謝申し上げます。ALSは筋萎縮性側索硬化症の英語の略称で難病に指定され9,950名が登録されています。未だに原因が不明で運動神経が選択的に侵されることによって身体を動かすことや食べること、話すこともできなくなり呼吸障害が進行し人工呼吸器を付けないと3〜5年で生命の危険が生じる大変過酷な進行性の神経難病です。しかしながらALSは適切な医療と必要な社会福祉のサポートがあれば、地域で人としての尊厳をもって生きられます。当協会は約5,000名の会員で患者、家族約2,000名が加入して患者、家族等の交流や療養環境の整備、原因究明と治療法の確立促進等の活動を行っている非営利団体です。

 さて、私が法律案への意見を述べる前に、本日の参考人の予定であった当協会副会長の岡部宏生からの「障害者の参考人意見陳述」に関してのメッセージを紹介させていただきます。本人は傍聴席におります。

「おはようございます。日本ALS協会の岡部宏生と申します。本来であればここに座って、委員の先生方とお話をさせていただいているはずです。冒頭のご挨拶として一言申し述べさせていただきます。私はALSという神経難病の患者当事者で人工呼吸器をつけていますので、コミュニケーションには特殊な方法を用いて通訳者を必要とします。それでコミュニケーションに時間を要するという理由で、今日の参考人として招致されたものを取り消されました。
障害者総合支援法の国会審議において、障害者の参考人を拒否なさったわけです。国会の場はまさに国民の貴重な時間と費用の極みだと認識しております。その国民の中には私たち障害者も存在しています。国会の、それも福祉に関する最も理解をしてくださるはずの厚生労働委員会において、障害があることで排除されたことは、深刻なこの国の在り様を示しているのではないでしょうか。
先に述べましたように、国会の場は国民の時間と認識していますので、コミュニケーションに時間がかかることで議論が深まらないという懸念は一見もっとものように聞こえますが、少しの工夫があればほとんど問題はなく議論ができます。但しそれには、長期間の訓練による通訳の技能が必要であること、それはこの法案の内容にも直接関わっていることでもあり、可能であればこの場において先生方にご覧いただきたかったと思います。
後ほど、委員会の事務局に具体的にその方法の一部を提出しますので、今後の厚生労働委員会の審議の在り方について委員の先生方にご一考いただけますことを切に願っております。
この法案の中には重度訪問介護の利用による居宅などに代わる場所についても、ヘルパーを利用できることがうたわれています。それは私たち重度のコミュニケーション障害を持っているものにとっては生命の危機に面するようなことにも繋がっていますので、ぜひ病院内も含めて利用できるようにしていただきたいとお願い申しあげる次第です。」

以上で岡部からのメッセージ代読をおわります。今後は是非、合理的配慮をお願いします。

それでは今回の法律改正案に関して私から参考人意見を述べさせていただきます。私どもALS患者の多くは障害者総合支援法を活用して生活しておりますが、今回の改正を評価する立場から2点、考えていることを述べます。

私どもALS患者の多くは障害者総合支援法を活用して生活しておりますが、今回の改正を評価する立場から2点、考えていることを述べさせていただきます。
一つは法律改正案(概要)の1.障害者の望む地域生活の支援の(3)項の「重度訪問介護について、医療機関への入院時も一定の支援を可能にする」ことに関して、もう一つは(4)項の「65歳に至るまで相当の長期間にわたり障害福祉サービスを利用してきた低所得の高齢障害者が引き続き障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合に、障害者の所得の状況や障害の程度等の事情を勘案し、当該介護保険サービスの利用者負担を障害者制度により軽減(償還)できる仕組みを設ける」ことに関してです。

1.「重度訪問介護について医療機関への入院時も一定の支援を可能にする」(法案第5条第3項関係)ことに関して
現在、在宅のALS患者の多くは介護保険と重度訪問介護を利用し、患者の支援に
慣れたヘルパーから、コミュニケーション支援、喀痰吸引、体位交換や胃ろうを使っての栄養注入などの介護のため長時間付き添っていただき生活していますが、入院する時は慣れたヘルパーの付き添いができないことが多く、また一部の自治体で地域支援事業として一定時間のコミュニケーション支援しか利用できず、個別性に則した適切なケアが受けられないことなどにより体力を消耗し、かえって体調を崩すことがあります。特に医療スタッフとのコミュニケーションの困難が、時には生命の危機に繋がるような事態も生じています。

 このため、協会としては長年にわたって、在宅で慣れたヘルパーの入院中の付き添いを認めて頂くよう要望し続けてきましたが、今回、重度訪問介護によるヘルパーの付き添いが法律として全国で認められる動きになり、患者は一日も早く施行されることを望んでいます。

施行にあたっては地域によって、重度訪問介護ではなく居宅介護を利用している地方患者が多いことへのご理解をいただき、現在利用している地域支援事業でのコミュニケーション支援も併存し、どちらを利用するかについては優先関係が発生しないよう特段の配慮を希望します。

また、現時点では障害者支援区分6の者を対象とする予定と聞いておりますが、対象範囲の拡大などについては、法案成立後も引き続き厚生労働省と議論させていただきたいと考えております。

2.「65歳に至るまで相当の長期間にわたり障害福祉サービスを利用してきた低所得の高齢障害者が引き続き障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合に、障害者の所得の状況や障害の程度等の事情を勘案し、当該介護保険サービスの利用者負担を障害者制度により軽減(償還)できる仕組みを設ける」(第76条の2の第1項関係)ことに関して

今回の改正案の重度訪問介護や居宅介護などの障害福祉サービスを65歳前に一定期間利用してきた高齢の障害者に対して介護保険の利用者負担を軽減することについては、評価しております。

現在のALS患者の年齢構成は60代後半の高齢者が最も多くなっています。しかしながら、重度障害者で重症難病患者であるALS患者は今回の改正の負担軽減には該当しないようになっております。

ALS患者は現行の介護保険と障害者総合支援法の制度を利用しており、介護保険では40歳から64歳までの2号被保険者(16特定疾病)と65歳からの1号保険者に該当し、介護保険サービスを障害福祉サービスに優先して利用するという規定があるため、病気が進行し障害がより重度化した場合に障害福祉サービスを上乗せ利用しております。介護保険要介護5で支給限度額まで利用した場合、月あたり1割負担の約37,000円の自己負担が生じます。
また若年発症のALS患者は40歳まで障害者福祉サービスを利用して、40歳からは、介護保険サービス優先となり、その自己負担が発生します。
 介護保険障害福祉サービスを併用する場合に「高額障害福祉サービス等給付費」による自己負担軽減措置がありますが、今回の改正による介護保険負担分を障害福祉で全額負担軽減する措置は受けられません。
 ALS患者は医療費等の出費も多く、学齢期の子供がいる世帯などにおいては介護保険の自己負担は家計を圧迫し、子供の進路にも、しわ寄せが生じています。中には自己負担を減らすために介護保険サービスの利用を抑制する場合もあり、必要な重度訪問介護等の障害福祉サービスの上乗せ利用ができない患者も少なくありません。

40歳以上で介護保険サービスと障害福祉サービスを併用している場合も、今後、改正案と整合性のある対応策を講じられるように附帯決議等を要望します。

法案の内容には、今後の課題として残った部分はあるものの、入院中のヘルパー派
遣や高齢障害者の利用者負担の軽減など評価できる部分が多いことから、この法律改正を是非今国会で成立させていただきたいと思います。
 どうぞよろしくお願い致します。